なぜ国民投票の結果はNO? コロンビア現地の声

コロンビア政府と反政府ゲリラ組織(以下、FARC)との和平合意への賛否を問う国民投票が10月2日行われ、和平合意が否認された。6万票という僅差ではあるが、国民は和平合意に「NO」とした。

なぜ?

NHK等日本の複数の報道はどれも同じような表面的な内容で、反対理由の詳細が記述されていないので現地の友人との会話からワタシが理解している範囲で紐解いてみたいと思います(注:専門は政治ではないので現地在住の外国人の一意見としてご理解頂ければ幸いです)。

まず一番の理由は「大雨が降っていたから」。冗談と思われるかもしれませんが、雨の音がうるさすぎて起きてしまったぐらい大雨が降っていて、なんか嫌な予感がしていました。案の定、こんな歴史的に大事な国民投票において投票率は約38%と異常に低いのは、雨が少なからず影響しているかと。前日までの報道(メディアによって異なりますが)では賛成が優勢と伝えられていて、「ま、ワタシ1人が行かなくても何も変わらないでしょう」って人が賛成派に多くいたのは想像できます。午後には雨が止みましたが、午前中に行く予定だった人は「もう、午後は予定あるし行かなくても大丈夫でしょ」とも容易に想像できます。友人の従妹(20歳)はまさにこの例で、投票結果を聞いてショックを受けていたようです。

次の理由、「国を滅茶苦茶にしてきたFARCが今回の和平合意によって今まで犯してきた罪が軽減されるのは許せない!不公平だ!しかもFARCのメンバーが社会復帰する際に与えられる2年間の補助金はあり得ない、彼らが政治に参加するのもあり得ない」と考える人達。今回の例に限らず、NOという人達は代替案を提示してくれ、といつも思います。合意内容を見直せ、というわけなんですが4年かけて至った合意なんですよね。。
まあ、そうなんです、殺人・強姦等の罪を犯しても懲役3年だったり、そういった刑事免責が適用されると聞いて、政府はそこまで譲歩して合意に持ち込もうとしているのか、とワタシも少し疑問に思っていました。でもこれは和平合意の内容をしっかり読んでない人がする誤った解釈の典型例で、殺人等「Human Rights」に関与する罪を犯した人間にはこの刑事免責は適用されない、と賛成派の友人から聞きました。なので未成年のリクルーティング等の罪は軽減されるけど、大半の罪は通常通り裁かれると。ちなみに、犯罪の関与を否定した後、証拠や証言が出て虚偽の発言をしたと判明すると懲役20年にもなるとのこと。但し、この刑事免責の点は海外メディアの報道を読んでも結構曖昧で、記者もきちんと理解しているわけではないんだなという印象を受けました。合意内容の原文を読んでないワタシも正直現時点では断言できません。

この50年もの間続いた紛争の死者は22万人、立ち退きを余儀なくされたのは500から700万人(displaced. 行方不明者数が数百万人と報道している日本語の記事もありますが、恐らく立ち退きのこと)とされ、被害者の家族の気持ちを汲むとやりきれないですよね。当然FARCのメンバーに対しての裁きは厳しいものを望むだろうし、許せないですよね。当然今回の合意内容にも納得いかず、彼らはNOに投票すると思っていたワタシの想像は乏しいようです。実際被害者、被害者の家族の多く、紛争地域の多くの人達は今回の合意に賛成(YESと投票)しているんです。(Casanare等反対が7割を占めた紛争地域もあります。)なぜか?もうこれ以上被害を生んでほしくないからなんですって。実際ワタシの友人に、15年前従兄弟のおじさんがFARCに誘拐され、身代金を支払えなかったために殺害される、という辛い経験を持った人がいます(家財全部売って初めて提供できる額であり、FARCは事前に誘拐する家族の資産とか下調べしてるんですって。そしてそれが組織の収入源になると。)。彼は今回の合意には賛同しており、ちょうど昨日一緒にいたのですが投票結果を聞いた時唖然としていました。じゃあFARCの処置に対して不満を抱いて(YES側の多くも不満を抱いているのは事実として)反対している人達は誰なのか?直接被害を受けていないが、FARCが犯した犯罪のセンセーショナルな報道を受け、被害者を思って正義を振りかざしている人達が結構いるようです。つまり、大都市に住んでいて紛争とはあまり縁はないが刑事免責等許せない、こんな甘い処置をしたと子供達に教えられない、としている人達。結構納得しました。アウトサイダー程騒ぐ傾向にあるというこの現象、決して今回のコロンビアに限らずどこにでもある話かと。更にアウトサイダーであるワタシのような外国人とか口出すんじゃねえ馬鹿野郎って話なんでしょうけど。

そして補助金に関してはFARCのメンバーが社会復帰ができるまでの2年間1人当たりCOP24million(1ヶ月約日本円で3万円ちょっと)支払う合意内容なんですが、NOと投票する多くの人は納得していません。2016年の法定最低賃金は月額COP689,455(2016年10月3日現在のレートで約2万4千円)なので、犯罪を犯してきた人間に最低賃金より高い補助金を与えるのはおかしい、となんとなくワタシも理解できます。じゃあ幾らなら納得するの、と反対派に聞いてみたものの具体的な額は(少なくともワタシの友人は)考えておらず、補助金はコロンビア人全員にも与えるべきだ、とただの感情論を持っていました。うーん、悲しいが日々の賃金に納得していない大半の労働者の本音かなと考えさせられました。ちなみに賛成派の友人は、この補助金を受けるには10項目ほどの資格条件をクリアする必要があり、ハードルは想像している以上に高い、だからソファに座ってポテチを食べてるだけのようなFARCのメンバーは当然補助金等受けられないため決してFARCに有利な内容ではない、としています。

政党参加に関しては2018年及び2022年の議会選挙にて10席が確保されています。今回の国民投票に賛成であれ反対であれ国民は誰もFARCを支持していないのは明白なので、この点に関する問題点はワタシもよく理解していません。どなたかご存知の方教えてください。

そして3つ目、現政権を支持していない人達がいる、という理由。そんな馬鹿な。本当なんです。今回の国民投票でNOに投票しようと大々的に先導しているリーダーが前大統領のウリベ氏。影響力健在のようで、主な理由は2つ目に挙げたFARCの対処に不満があるようですが、実際に現サントス大統領を政敵としているのは有名な話。「現大統領は単にノーベル平和賞が欲しいだけ」とみてる層はこの辺りですかね。ちなみに現サントス大統領の支持率は25%前後と低迷しています。

今回コロンビア人の友人ざっくり10人程(ボゴタ在住)に意見を聞いてまわりましたが、若い層の全員が合意内容に不満はあるが賛成(YES)、ワタシの家を改装してるおっさん2人は反対(NO)でした。申し訳ないですが、教育の差でどちらに投票する傾向があるかは明白で、一部の現政権に反対するインテリ層が不満の溜まっている労働者の層を確保した構図に見えました。でも当然全員がこれ以上の紛争を望んでいないのは事実で、どこまで譲歩できるかのジレンマを抱えています。

NOと主張する人がワタシの周りに少なかったので少しバイアスのかかった内容になってしまいましたが、ワタシも合意内容の原文読んで気が付いたことがあったら追記しようと思います。

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